関西学生剣道優勝大会を振り返って
いよいよシーズン後半戦が始まった。このシーズン後半戦の幕開けに臨む学生の心意気は疑問の残る入り方だった。
例年、稽古の開始はもっと早く始めている上、合宿・遠征の計画の悪さが目に付いたので、大会に向かってのコンディション作りを心配した。
しかし、合宿遠征後の稽古で、男子は私が思っていたよりも全員が気力が充実しているのを感じた。これなら良い結果が得られるのではとの感触を思わせた。
反対に女子は気力の張り、部員全体の充実感をあまり感じなかった。期待を感じさせる雰囲気からは程遠かった。特に女子主力の一部における不振は目を覆うほどであった。
【男子一回戦 和歌山大】
先鋒から順当に勝ち星を重ねるが。全体に勝とうとする気魄(気迫)が感じられない。反応が遅く、そのため相手に先に技を仕掛けられている。先の試合に不安を残した。
【男子二回戦 京都創成大】
案の定、次の京都創成大戦にこの不安が的中した。先鋒の岩切と大将の吉井以外は、勝とうとする気持ちが出ていない。先々と相手に技を仕掛けられて、打つ機会を失している。そのために大将戦までもつれてしまった。相手の大将もなかなかの技量で勝負がつかず代表戦までもつれ込んでしまった。京都創成大も良い選手を集めている新しい大学である。選手全員が侮れない気持ちがあったのか。慎重になりすぎたのか、合宿・遠征の疲れが出たのか。とにかく技が先に出ない。それが代表戦までもつれた要因であろう。代表戦は「過日の個人戦と同じ気持ちで戦ってくれると良いが」と思う気持ちが吉井に通じたのか、よく相手の動きを読み、足を使って決定打を打たせない。危ない場面もあったが終始自分のペースを守り接戦を制して三回戦に駒を進める道を開いてくれた。
【男子三回戦 天理大】
三回戦は天理大学。武道科が出来て優秀な選手が集まっており息の抜けない戦いである。この試合も一回戦、二回戦同様、勝負が遅い。先に技を仕掛けられている。その中でも、先鋒の岩切はいつもの力を出して勝負をしていた。山田は少々調子を落としていたように見受けられたが、積極的に技を出して仕掛けていく姿勢はこれまでに無い良い動きであった。それに反して他の選手は少々気魄が欠如しているように見えた。合宿や遠征の疲れがここに来て出たのか、このようなコンディションで負けることも無くよく大将まで引き分けでもってこれたものだと思った。今大会は吉井を頼りにする他無い。天理大学の大将もなかなかの技量で、体は小さいが技は繋がっており鋭い打突を出してくる。大将戦では吉井も危ない場面がたくさんあったが、よく凌ぎきって代表戦に持ち込んだ。大将戦は、時間間際に取得した面、その後の「始め」の合図の直後に取られた面、気がゆるんだか、時間で逃げようとしたか、その気のゆるみをうまくつけこまれた。もったいない一本であった。少しの気持ちの変化がこのような結果をもたらす・・・剣道とは難しいものである。この代表戦も二回戦のような試合運びをしてくれるように願って観戦。大将吉井は私の期待に外れない動き、駆け引きをしてくれている。相手選手もこの代表戦の重要性を心得ているために、大将戦のときのようには仕掛けてこない。両者共に機を見て技を仕掛けるが決定打にはならない。おそらく慎重になっているからであろう。中盤以降から相手選手の手数が減ってきた。緊張なのか、疲れからか。吉井の得意の小手から面に渡る技が相手に伝わるようになってきた。良い傾向である。疲れもあるだろうが、積極的に仕掛けていった方が良いと思っていたところ、相手選手が技を仕掛けた。吉井の小手・面の勢いが通じていたのだろう。少し中途半端な技を仕掛けてきた。吉井は待ってましたとばかり、得意の抜いての面を見事に決め、代表戦を制してくれた。あぶない試合が二試合続いた。選手のふがいない試合に比べて応援席には多数の先輩と学生が集まって一体となっての大きな応援。今までに無いことである。これは選手を後押しする大きな力である。
【男子四回戦 関西大】
四回戦は関西大学。昨年負けて敗者復活へ落とされた相手であり、正に雪辱戦である。関大も近年良い選手を補強しているので、これまでのようにはいかない。今までの試合運びではだめだと思っていたところ、選手たちは大変身をした。今までの試合と違って気魄が違っていた。好調岩切、そして調子を取り戻した山田。この二人が共に勝って次の選手へ弾みをつけてくれた。元来、無理の無い剣風の塩川に思い切った技が出ていなかったが、この試合は目を見張る気魄である。体勢を崩しての打突であったが、審判の手を上げさせる気力で二本勝ちをしてくれた。気力が勝るとこのように勝てるのだという見本である。一本も取られずに三人が勝ったことにより、大変有利な展開となった。中堅の安達は防御から攻めの切り返しに不安を感じながらも健闘した。次の小林はなかなか有利な上段を取らせてもらえない。一本先取したが逆転負けを喫した。副将山内と大将吉井が勝って関大を圧倒することができた。関大は、我が校が先の試合でもたもたしている間に試合を終えており、結果的に随分と時間を待たされた。これが影響したのではないかと思われた。次の試合を待たされたときのコンディション作りや緊張感の維持の難しさを逆に教えてくれた。待たされた時の緊張感の維持の大切さを本校も考えておかねばならない。
【男子準決勝 近畿大】
準決勝戦は近畿大学。関大戦が終わってすぐの試合。これが当方に幸いであったと思う。近大は昨年度の優勝校であり、前回は圧倒的大差で負けている。今大会は岩切と山田の活躍が目についた。次鋒の山田の出ていこうとするところを上から乗られた面、まずいものもあったが二人が揃って勝ってくれた。この二人がチームを引っ張ってくれている。塩川は関大戦での勢いとは異なり技が出ない。苦しまぎれのような面を打ってしまい、抜き胴を打たれてしまった。この負けにより流れが向こうに行くことを心配したが安達が苦しい試合ではあったがなんとか食い止めてくれた。安達の殊勲である。副将山内は勝つか引き分けるかで勝ちの決まる大事な試合となった。ここまでもうひとついつもの気魄が感じられない山内であったが、自分のペースを作り出し、見事な面を二本取得した。これで四勝となり、勝利が決まった。大将吉井は勝利が決まって気持ちの充実を欠いたのか、今大会で初の黒星を喫した。しかし近大に勝利できたことは今後の展開には大きな自信に繋がったであろう。
【男子決勝戦 大阪体育大】
決勝戦は大阪学院大戦を制して勝ち上がってきた大阪体育大学。春の個人戦でも多数の選手を全日本に送り込んでいるので、今年の大体大は強い。案の定、先鋒から勝負に対する勢いが違っていた。この勢いに我が校選手は飲み込まれてしまった。技術的には決して引けを取らないと思うが、勢いで相手を上回る気力が必要である。我が校の選手は緒戦の戦いに戻ってしまったようである。先鋒から一本も取得できないまま負けが続いた。一本でも取って今後の試合の為にもと願ったが、副将山内まで一本も取れずに負けてしまった。大将吉井の相手は春の関西選手権で負けている選手である。その時の試合は少々運にも見放されていたと思う。前監督が現役の時、国士舘大と戦った時の試合を思い出させた試合であった。吉井は相手上段から基本のような見事な面を打たれる。このまま一本も取れずに大体大に完敗かと思われた時、色の無い見事な面を取り返した。これで一本一本の勝負である。吉井は果敢に攻めた。得意の小手・面も出た。小手にいったところ相手選手が竹刀を降ろした。その瞬間に見事な面が決まった。やはり気力を込めて打ち切っていくことが有効打突に繋がるということを教えてくれた。本人も無意識に打ったのであろう。一本も取れずに負けていたところを大将が勝ったことは立命に対する印象も異なってくる。賞賛に値する大切な勝利であった。
今大会は吉井の活躍で決勝戦まで進出することが出来た。他の選手の一層の奮起を促したい。今大会のような状態で全日本に臨んだのではおそらく勝てないだろう。意外性のある選手、勝とうという気力の満ちた選手の起用を考えるべきだろう。そして今までの実績に甘え安閑と稽古に取り組んでいてはだめである。女子にも同じことが言える。より一層の努力と研究が望まれる。
ただ、狭い道場、多数の人数により稽古量の少なくなる中で今回の成績は評価に値する。先輩方のより一層のご指導とご支援をお願いいたします。
宮崎正睦記